2019/05/05(日)BBTのシナリオ作成に関する覚え書き

【R3/5/13更新】
 加筆したものをEvernoteにて公開しました。


 BBTのシナリオ作成に関して、自分でよく気にするところとか、作り方に関する「他者のノウハウ」を見たい人とか、そういう資料をちょっと残しておこうと思ったので、色々と書き下していきます。これはあくまで私のやり方なので、必ずしも正しいわけではないということは前提としていただければ。また、初期作成(ないし使用経験点20点以下)の卓を想定しています。

今回予告とハンドアウトの作成

 私はまず、今回予告とハンドアウトをざっくりと書いてから本文に取りかかります。と言ってもがっちりとこの時点で書いているわけではなく、あとでもちろん手直しをします。

 今回予告は「自分が書くシナリオの方向性をブレさせないため」、ハンドアウトは「このシチュエーションに対してそれぞれのPCがどんな立場で関わるのか」を明確にするために先に書いている、というお話ですね。


 3~4人用のシナリオを書くことが多いのでそれに合わせた話になりますが、【シナリオの重要人物をシナリオ絆にするPC】が2人【公式NPCを導入のきっかけとするPC】が1~2人、というバランスでハンドアウトをよく作ります。公式NPCについては、概ね立場が人間寄りの組織である「死霊課」「ペルソナ・ネットワーク」のどちらかから1人、それ以外のNPCから1人、という感覚。

 オリジナルNPCと公式NPCの配分は経験的なものと自分の嗜好とが混じっているのでだいぶ感覚的感情的な話になるんですが。

  • 「シナリオでPCが新しく覚えないといけないNPCは3人までにしたい」という目標でこのような形にしています。
    これ以上増えると、「GMがNPC同士の掛け合いをせざるを得ない局面」が増えてしまう、という懸念があるためです。テキストオンセならまだしも主戦場がボイスオンセなので、独り芝居は(自分にかかる負担の問題から)できるだけ避けたい。
  • 公式NPCについては「そのNPCへの共通認識」をプレイヤー側に特に何も言わずとも互いに参照できるため、導入にあたって「どういうキャラクターか」という描写をいちいちしなくていいのがGMにとって助けになります。
    そのため、この枠は「PCへの依頼」という形にして、シナリオ本体にはあまり関わらないケースが(自分のシナリオ作成上は)多いものとしています。

 概ね、この時点のハンドアウトは「シナリオの重要人物と主に関わるのは誰か」「どういう形でこの事件に関わるのか」「PCに与えるSAはどのような方向性か」に迷わなくなる程度の書き込みがしてあればいいでしょう。

 一通りシナリオが完成したらもう一度見直して、プレイヤーに与える導入の情報が過剰でないか、不足していないか、PCが事件に関わるモチベーションとして適切かを再確認しましょう。


ハンドアウトのナンバー設定

 私の場合、必ずしも「シナリオの中心に近い順にスモール→ハイナンバー」の順で並べていないことがあります。

 これは、ミドルフェイズのPCを合流させるシーンで、PC間絆を互いに持っていない奇数ナンバー・偶数ナンバーのPCをそれぞれ先に合流させたいという意図が先にあり、PC2・PC3のハンドアウトを入れ替えて対応していることがままあるためです。奇数ナンバー、偶数ナンバー同士で合流させておくと、全員合流させる時にPC間絆を何らかの形で持った組み合わせが合流することになるため、合流・協力が自然になりやすいとの考えです。


SAの設定

 基本的な考え方は基本ルールブックP225に1セクション取られているので、そちらを読んでください。

 私はSAの設定はハンドアウト作成とセットで行っています。「シナリオを最後まで遊べばある程度達成が見える」範囲にしますが、PCが事件に関わるきっかけや立場と、“SAを与えられた時点で”PC側から見たときに辻褄合わせが難しいものは避けるようにしています。基本的にはハンドアウトで与えた情報に矛盾しない範囲で設定するのが望ましいでしょう。ルールブックにもありますが、「一目で理解できるもの、理解しやすいSAがよいSA」です。

 また、複数のPCに対して「文面が同じSA」を与えることも多々あります。これは立場は違えど目的は同じ、という意識をSAという形で目に見えるようにセッティングしている気持ちでやっています。(活かせているかどうかは正直わからない)


NPCの設定について

 以下のことに気をつけるとよいでしょう。

  • 絆/エゴの設定をしておく。「このキャラクターはこういうやつなんだ」という内容が明確化され、ロールプレイがしやすくなります。また、この情報を何らかの手段でプレイヤー側が得られるようにしておくと、ボスの目的等もわかりやすくなりシナリオがより分かりやすくなります。
  • シナリオで絆の修復・エゴの参照を必要とするギミックがある場合は、必ず「絆・エゴの内容」が情報として得られるようにしましょう。(情報収集の結果で得られるものでなくて構いません。この情報がないと、脳内当てになってしまいます。)
  • あらかじめロールプレイ指針を立てておくと、想定外の問答が来た時に対応しやすくなるので、作っておくことが望ましいです。
  • シナリオを公開し、他の人に遊んで貰うことを前提にする場合は、公式パーソナリティ紹介に準じる程度のキャラクター紹介を用意することが望ましいです。


シーン数やミドルフェイズの構成などについて

●戦闘シーン

 基本的にクライマックスフェイズ含めて2回までが時間的にも負担が少ないと思います。

 BBTの戦闘は割り込み処理が多いため、たとえ1ラウンドだけの戦闘であっても案外時間がかかります。クライマックスフェイズの1ラウンド目なんて1時間近くかかることもよくあります。サンプルシナリオでは3回戦闘シーンを組んであるケースが多いのですが、ここは意識的に削っています。

●簡易的な戦闘

 それぞれのPCに戦闘関係の判定を1回ずつ振らせて、戦闘を簡略化する形式で行うのもよいでしょう。判定がPC人数分で済むので、ロールプレイを別とすれば時間短縮には劇的な効果があります。

 この場合、戦闘の結果として生じる人間性や【FP】の消耗を、判定失敗すると消費がより大きくなる形として、判定後に行う形で消費させます。

●合計のシーン数

 オープニング・エンディングを除くと、4人用シナリオでは

  • 「PCを2グループに分けて合流させるためのシーン」2つ
  • 「合流を兼ねる、ミドルフェイズの戦闘シーン」
  • 「情報収集パート」(スムーズに終わるなら2シーン程度を想定)
  • 「情報収集を受けて状況を展開するシーン」1~2つ
  • 「クライマックスフェイズ」

 概ね7~8シーン程度を想定して作っています。各PCの登場回数で見ると、オープニング含めて7回前後になると思います。

●情報収集項目の数

 私は[PC人数×2]以下(上限7)がちょうどいいな、と考えています。逆に、3回ずつ判定して全部成功しても情報収集が終わらない(情報項目が10~12以上)ような状況は、よほど情報収集に注目したシナリオでもない限りはかなり長いものになっていると思いますので、「情報収集のための情報収集」が過度になっていないか再確認したほうがいい印象。

●人間性の低下量想定

 上記の想定をそのまま使うと、

  • シーン登場回数は7回程度=人間性低下は期待値で24.5
  • 情報収集パートで「ファミリア」等の判定値振り替えアーツを2回ずつ使用すると想定=消費4
  • ミドル戦闘の人間性低下=15~20程度と想定(初期作成の場合はもう少し割引して考えるといいでしょう)

 合計の人間性消費は約50弱。クライマックスフェイズ開始時には概ね第三変異に突入するかしないか、というところまで減っているのではないかと思います。

●堕落判定

 私はシーン数が多い場合は行う必要はない、と考えています。もちろんシナリオ上堕落判定が表現として適切な場合はあると思いますので、あくまで“テンプレート的に行わなければならない”というのは違う、というだけの話ではあります。


情報収集の難易度設定

 初期作成を基準として、PCの情報収集判定に関する得手不得手はこんな感じを目安に。

能力値目安
【社会】8情報収集は大得意。財産点と素の判定値の高さで安定する。
さらに「情報コネクション」を持っていると盤石。
基準値8 【社会】以外、とりわけ【技術】か【感情】が8のケース。
「アクセスコード」等の使用は必要だが、情報収集は得意な部類。
基準値5~6 情報収集は得意でも不得意でもない。
基準値3~4 情報収集判定は不得意な類。このラインのPCが何もすることがない情報収集パートはなるべく避けるか、あらかじめ情報収集の目標値が高めであることを伝えておくとよい。
基本的に基準値3はファミリアを取っていないイレギュラー純血orヴォイド純血なので、だいたい自業自得として見て割り切ってしまうのもひとつの手ではありますが…。
基準値2以下 《ダメ人間》マルチルーツとか《殺戮専用》とかでさらに下方修正かかってるケース。基本的にこのラインを想定して難易度設定をする必要はないでしょう。

 基本ルールブックP185の「難易度の目安表」も一読していただくとして。概ねこのような目安で組んでいくといいと思います。ひとつの情報収集項目に複数の難易度を設定する場合、文章の段落で分割する程度の気持ちで作ってよいでしょう。

難易度目安
難易度18以上 【社会】に特化したPCが財産点を使うか、《フォローアシスト》を受けた能力値8のPCが判定を行うことを前提とする程度の難易度。シナリオ最終情報としての壁
難易度15前後 能力値8のPCが期待値を出せば達成できる難易度。
難易度10~14 情報収集判定を不得意としないラインのPCが、自力で何とか達成可能なライン。
難易度6~9 情報収集判定が不得意なPCでも参加できるライン。



エネミーデータについて

 以下、初期作成PCを相手にする場合の指針です。経験点使用許可を出している場合はもう少し強くしていいと思います。このあたりは自分自身が卓を囲むPCの傾向にもよると思うので、あくまで参考程度に。

●エネミーレベルについて

 公式データの読み方の目安として。

  • 【種別:ドミネーター】――
     特にLV10エネミーはまかり間違ってもそのままのデータで初期作成PCに出さないように。オリジナルのドミネーターを作る場合は、インペイラーやガイウスを基準とする方がよいでしょう。サプリ盛り盛りかつプレイヤーの練度が高く、データ的に強いPCを作ってくる環境の場合、人数による調整を「1人多い」データでやるとそこそこイケる印象です。
  • 【LV7以上】――
     「修羅」や「戦車」など、初期作成のデータで正面から相手取るのはかなり厳しいエネミーが軒並み名を連ねているレベル帯です。正面から初期作成のPCが相手取るなら、罪を複数点消費するか、元々のデータから相性がいい必要があるでしょう。
     罪の切りどころに迷わない、クライマックスの取り巻きとしては1体程度なら概ね適切だと思います。(さらに追加の取り巻きを出す場合は、LV1-4ぐらいのエネミーを選ぶといいです)。
  • 【LV4-6】――
     概ねミドル戦闘の敵リーダー的存在です。1体いるとよいでしょう。このあたりから初期作成PCでワンパンKOできなくなるので、出し過ぎると戦闘がグダグダになります。注意。
  • 【LV1-3】――
     ミドルの取り巻きエネミーとして最適な、雑魚敵ポジションの敵が多く属するレベルです。数体まとめて出してもよいですが、範囲攻撃で効率よくなぎ払える配置にしておくと範囲攻撃持ちPCの見せ場が増えてGOOD。
     ただし、初期作成というかサンプルPCは制限の少ない範囲攻撃持ってないキャラクターが多いので、範囲攻撃を前提とした物量作戦は、PCの構成を見てからやるかどうかを決めた方がいいです。エネミー数が増えればその分戦闘に時間がかかることも忘れずに。

●シナリオボス(ドミネーター)の構築について

 正直この辺の構築は感覚的なところや卓環境によるところが大きいので、環境が許すなら何度か経験を積んで「この環境ならこのくらいで行ける」ラインを掴めるのがベストだと思います。データの尖り具合はかなり人によって異なるため。それでもなるべく一般化した言語化を試みるセクションです。なお、数値としては概ね初期作成向けのものを扱っています。

 また、インペイラーのデータ改造について、記事末尾に例を載せていますので、興味のある方はご一読ください。

  • 能力値の目安――
     ばるく氏の資料がわかりやすいので参考にしましょう。
  • 【FP】の目安――
     概ね「想定する攻撃役(※1)の数×2×30~60点」ぐらいを目安に作っています。インペイラー(5人用)を例に取ると、クイックスタートだとAT2人・殴りSP1人+DF2人の編成なので、攻撃役3人×2×50=【FP】300点で概ね一致します。取り巻きがいる場合は1~2回分減らしてください。
     これは単純に「サンプルアタッカーのダメージ期待値が40点前後」で、罪でダメージ増強をするとだいたい50~60点程度のダメージになる計算に基づく、という点には注意してください。攻撃役2人想定の卓で攻撃役が1人しかいなかった場合は【FP】を減らしてあげるとグダグダにはなりにくくなります。
  • 持たせるドミニオンアーツに困ったら――
     《不変》+《絶望》LV2+《神速》LV1+《崩壊》LV1+《超越》LV1あたりはだいたいのドミネーターに持たせておいて困らない、概ね“基本セット”と称していいでしょう。(多人数の場合は《神速》のレベルを上げ、攻撃回数に合わせて《絶望》《崩壊》《超越》どれかのレベルを微調整。結構悩ましいが…)
  • 《世界律:不滅》の扱い――
     《世界律:不滅》は、「使用するドミネーターは真の死になるまで戦闘をやめない」――PCに対する最後通牒としての役割も持ちます。あと一息であると同時に、そのドミネーターはPC達と相容れない立場・思想であるということが強調されます。また、PC人数が少ない、もともとの【FP】が非常に高い場合などは、手数が1回増えることで事故を招くことがあるため、採用しない場合もあります。
  • 攻撃力の目安――
     いろいろな見解があるので一般化するのが難しいのですが、たぶん「範囲攻撃を《守護の盾》でカバーしたところに《世界律:絶望》を載せたらディフェンダーをワンパンKOできる」程度は満場一致で問題ないと言われるはず。
     《絶望》込みでディフェンダーを追い込める程度の攻撃力があれば問題ないものとして、ディフェンダーに1回は罪の効果「復活」を切らせたいところです。
  • 【回避値】の目安――
     初期作成PCについては、命中関係の基準値が8前後であることが多いので、【回避値】は7以上にするとPCの攻撃が当たらないケースが増えます
     回避型のボスを作るなら、ダメージではなく命中判定に罪を使うことが多くなると予想されるので、【FP】は減らしておくのが無難。概ね「攻撃を【FP】で耐える」タイプのドミネーターの方が調整しやすいでしょう。
  • 経験点を盛った時の大雑把な強化目安が知りたい――
     樹都氏の資料が参考になります。

(※1)攻撃役:ここでは「アタッカー」および「殴りサポーター」ビルドのPCのことを指します。

●罪の計算について

 初期作成においては4点フル取得+4点フル活用を前提にすると事故が起きるので、おおよそ各PCの役割に沿って2点消費+追加の復活・達成値増強用のリソースとして1点使用する、ぐらいの計算でいいと思います。4点目以上の取得は予備扱い。割とコレでもしっかりロールプレイして罪を取っていくことを想定した数字(※2)なので、罪が投げられにくい環境ではもうちょっとゆるめの想定でいいはず。

(※2)罪の取得点数について:クライマックスまで8シーン程度ある中で罪の取得が1点以下、というのはPCのエゴ設定か、ロールプレイがしにくい卓環境的な問題があると考えたほうがよいでしょう。

 ダメージ増強の効果量としてはすごく雑な計算として「+20点」と考えるといいです。こう考えると、初期作成においては《神罰》もここから大きく外れません(《封印処置》とか《信仰のシンボル》とかなければ概ね30点で収まるので、想定外の威力にはならない、という意味)。

 このあたりのダメージは攻撃回数が1回分減る可能性はありますが、それはPCが切り札をうまく使ったということなので、ここを想定して【FP】を大量に盛ってしまうのは、私的にはちょっと違うかな、という認識です。もちろんこのあたりの認識は卓環境によって異なると思います。

 あ、でも《ダメ人間》(※3)とか《レネゲイドエフェクト》(※4)とか《喰我 -Ego Eater-》(※5)とか持った攻撃役相手はちょっと……盛っても許されるかな!

(※3)《ダメ人間》:《魔獣化》中に使用するすべてのアーツ効果にプラス補正を掛ける、ダメ半魔の選択取得アーツ。アタッカーが使うと、マイナーアクションのダメージ増加アーツに乗るわ《ビーストブレイク》に乗るわ《ヘヴィバッシュ/マルチウェポン》に乗るわ《魔獣の殺意》に乗るわとあっという間に補正値が山積みになるため、威力が暴走しやすい。
(※4)《レネゲイドエフェクト》:大罪「裏切りの烙印」専用。回数制限のない、アーツ効果を強化するアーツ。「種別:攻撃」のアーツはさらに強化できるため、これまた補正が暴走しやすい。《ダメ人間》と違って人間性という首枷がついているのでまだリスクは高いのだが…。
(※5)《喰我 -Ego Eater-》:GF誌先行掲載の「虚銃使い」専用純血アーツ。人間性をダメージに変換する《漆黒の殺意》の実質的な上位互換であり、その威力はアーツ1枠に対して最大+60と単発火力なら他のアーツ全てを置き去りにする異質さを誇る。しかも回数制限がない。


戦闘に関する準備事項

 前述の通り、BBTの戦闘は割り込み処理が極めて多く、処理が重い=時間のかかるシーンになります。GMは、あらかじめしっかりと準備しておくことで時間短縮が望めます。どちらにせよプレイヤー側が結構悩んで時間は取られるので、GM側はスパッと進められるようにしておこう、という話。

  • 敵の行動方針をあらかじめ決めておきましょう。可能であればシナリオ作成時点でエネミーの行動指針もあわせてデータに書いておくことが望ましいと考えています。
  • ドミニオンアーツについても、サンプルシナリオのように「使い方」をあらかじめ決めておくとスムーズです。《神速》は最初のイニシアチブプロセスで使う、《崩壊》はPC全員を攻撃したい時に合わせる、などなど。
  • エネミーのガードとドッジは、都度悩んで結論を出すのではなく即断即決できることが望ましいです。判定ダイスについてはエニーセブン(※6)で処理してガードを行わないとしてもいいですし、ドッジは行わずにガードしかしない、としてもいいです。「出目8以上が要求される場合はドッジしない」でも「ドッジしなければあとがない場合だけドッジする」でもいいです。何らかの方針を決めておきましょう。
  • エネミー側の割り込み処理を行うアーツ(特に振り直し系)はなるべく減らしましょう。達成値補正系のアーツについても、1シーンn回以上の回数制限のあるものが望ましいです。

(※6)エニーセブン:出目合計をすべて7として扱うこと。出目をエニーセブンとする場合は、戦闘前までに宣言しておくのがフェアだと思います。


インペイラーのデータ改造例

 最後に、実際にインペイラーのデータを改造していきます。今回は、せっかくだからBBT基本ルールブックの巻頭カラー漫画にちなんで、「天使」をベースにしたデータに改造していきましょう。

●ブラッド・ルーツ構成の変更と能力値の修正

 まず、ヴァンパイア純血(マルチルーツ)だったインペイラーを、セレスチャル純血に変更します。能力値構成については、上述したばるく氏の資料を参考に変更してもいいですが、今回は元データがあるので楽をします。セレスチャルのイメージに合わせて、【基本能力値】は【肉体】と【加護】の数値を入れ替える対応だけでいいでしょう。

 【戦闘能力値】については難しいところですが、これもイメージ(と《御使いの翼》)に合わせて【行動値】を底上げします。白兵攻撃はしない形にしますので、【白兵】を3ほど下げて、【行動値】に+6ほどかけてしまいましょう。(この数字はどちらかというと《御使いの翼》に準拠したものです。)

 【FP】やアーマー値、ガード値も適宜修正します。全体的に一回り下げるとちょうどいいでしょうか。このあたりは環境に合わせて適宜調整してください。

●ブラッド共通アーツの差し替え

 ヴァンパイアのアーツを、それぞれセレスチャルに即したものに入れ替えていきます。代替できないものはエネミーアーツへの差し替えも検討します。

  • 《鮮血の宴》→《範囲攻撃》
  • 《暴虐の君主》→《神撃》

 インペイラーは他にも《BS付与:邪毒2》と《混沌の主》を持っていますが、特に後者は代替する手段がありません(後発サプリのデータを使用してよければ《攻性防壁》が最も近いです)。《BS付与:邪毒2》は《畏怖》に変えてもいいとは思いますが、今回は削除します。

 また、インペイラーが持つ「デストロイハウル」は、アーツ《天の審判》か《地の災厄》に差し替えてしまいましょう。PCにとって厄介なのはどちらかというと《地の災厄》であることが多いのですが、今回は私の勝手なイメージを押しつけて《天の審判》を選んでおきます。

●攻撃手段の名称変更と差し替え

 巻頭漫画のイラストはどちらかというと特殊攻撃や射撃攻撃のイメージが強い天使ですので、主な攻撃手段を射撃攻撃に変更します。「ブラッディクロー」をそれっぽい名前に変更して、属性を〈加護〉(〈感情〉でも可)にします。射程は《天使銃》をイメージしてシーンにしてしまいましょう。

 ただし、《天使銃》そのものはアーマー値を0として扱う効果がついているせいで、ただでさえ《世界律:絶望》が辛いディフェンダーがさらに割を食う場合があります。実際に武器データも《天使銃》のものにするかどうかは、慎重に判断すべきでしょう。

●ドミニオンアーツの調整

 シナリオボスとなるキャラクターのエゴも考慮し、必要に応じてドミニオンアーツも調整します。

 しかし、今回は特に変更する必要はなさそうなので、そのままにしておきます。インペイラーの持つドミニオンアーツ自体は、そもそも結構バランスがいいものですし……。

●行動パターンをあらかじめ決めておく

 インペイラーに揃えて、初手は《世界律:神速》→《天の審判》。以降は可能な限り多くの敵を巻き込むように《範囲攻撃》《神撃》で攻撃していく、と言う風に、変えたアーツから戦法を改めて変えておきます。

 今回は色変えという最も単純な形ではありますが、このような手順でサンプルシナリオのボスエネミーを改造すると、概ね問題ない程度のエネミーができると思います。最初はこのあたりから始めて、徐々にオリジナルな構造のボス作成を目指していくとよいのではないかと思います。



 以上で本記事を終わりとさせていただきます。

 この記事が皆さんのシナリオ作成の参考資料のひとつとなれば幸いです。