時は2019年10月。まだ、コミックマーケット97の当落が出ていない頃。
そして、BBT世界が「怪獣」の襲来を受け、およそ1ヶ月!
この新しい“牧歌的でない”世界に初めて足を踏み入れる、3人の半魔が集まった。
GM:改めまして、再びこのメンバーで卓を囲めることを嬉しく思います。GMの倉坂です。よろしくお願いします!
拾:よろしくお願いします!
ナガマツ:よろしくお願いします!
田中:よろしくお願いいたします!
GM:まず、セッション前にチャットタブのお話として。全壊と違って、「雑談」「オフレコ」で2枠雑談用のチャンネルを作ってます。最初からリプレイ収録を前提としている部分もあるという事情もありますが、「最初からオフレコにしたい雑談の話題」に関しては、「オフレコ」タブのほうを活用していただければ。オフレコタブの内容は、基本的にはリプレイの原稿から省こうと思います。(前回と同じく、雑談タブ・メインタブの内容であっても必ずしも本文に組み込まれるとは限りません)
拾:はい、了解ですー
田中:了解です!
GM:全壊じゃなくて前回、ですね。PCがBBTに染まりすぎている……
拾:全力全壊の勢いでやりましょう(笑)
GM:それでは、改めて今回予告から入らせていただきます。
田中:ウス
「前回」
C96で倉坂が頒布したリプレイ、『若きドラクロワの芸術』を指す。
今回のメンバーは、全員続投してくださっている。前回はテストプレイのつもりで、リプレイは別途録るつもりだったのだが……色々な事情が重なり、テストプレイをそのままリプレイとすることになった。
変換がBBTに染まる
BBTに限らず、オンラインセッション、特にテキストセッションでTRPGを遊んでいる人や、自分で小説を書いていて“現実によく使う言葉と、自作の用語で入力が同じ”ものがあるひとは、よく分かってくれるはず…! そうに違いない…!
◆ 今回予告 ◆
地震、雷、火事、竜巻。
ありとあらゆる災害渦巻く昨今の池袋で、
あるひとつの映画撮影プロジェクトが動き出した。
『これはご決断されるほかありませぬぞ、総理?』
白髪を刈り上げた男が、顔面蒼白の男に詰め寄る。
ここは池袋。
ありとあらゆる危険と渇望が渦巻く、現代のソドム──
BEASTBIND TRINITY
「ディザスタァ・ムーヴィー」
糸口は、小さきヒトの確かな絆。
GM:というわけで、本セッション「ディザスタァ・ムーヴィー」、開幕とさせていただきます。よろしくお願いします!
ナガマツ:よろしくお願いします!
田中:よろしくお願いします!
GM:今回は、直近のGF誌で追加されたブラッド「ジャイガント」の設定を組み入れたシナリオです。出された以上挑まぬわけにはゆかぬ。
GM:とは言え、PC側の「怪獣使い」は必須ではない構成にしていますし、どちらかというと「卓環境にジャイガントの概念を導入するためのシナリオ」という位置づけで書いてる部分もあるので、案外肩透かしになる部分もあるにはあるかもしれません。その点については、先に宣言しておきます。
GM:というか、「どこまで踏み込んで扱っていいのか」も手探りの状態で書いてるので、このあたりは公式シナリオの登場が待たれますね。
拾:よろしくお願いします!
田中:愉しみ~!<ジャイガント
拾:ういうい、それも含めて楽しませてもらいます
GM:それでは、まずは各PCの紹介からお願いいたします。前回と同じく、PC番号逆順で、アンジェさんからお願いできますか?
慧鳥アンジェ:了解いたしましたッ!!
GM:それではまずハンドアウトの再確認から。
【絆】“レンドリー星人” 実相寺哲夫(関係:腐れ縁)
※推奨:「ブラッド:エトランゼ」または「カヴァー:スタントマン/スーツアクター」
あなたは自称“映画監督”、実相寺哲夫を名乗る宇宙人と腐れ縁がある半魔だ。
彼は心底困惑した態度で君に事情を話す。関東圏で昨今頻発する“災害”をもとに、パニック映画の脚本を書いている男がいるというのだ。
「そもそもこの辺で地震雷火事竜巻と頻繁に起きすぎなんだよねえ。それに便乗して映画を作ろうなんて、ちょっと“自称”映画監督のおじさんでも目に余るんだよ」
災害とパニック映画の監督についての内偵と排除。それが、かの“レンドリー星人”からの依頼だった。
“超銀河知性体・ハイブレン星人” 慧鳥アンジェ
→ キャラクターシート プレイヤー:田中
【スタイル】サポーター
【プライマリ】エトランゼ(宇宙人)
【セカンダリ】ストレンジャー(マッドサイエンティスト)
【出自絆】人間の世界(好奇心)
【邂逅絆】若槻由美(友情)
【初期エゴ】侵略せよ
“超銀河知性体・ハイブレン星人” 慧鳥アンジェ
→ キャラクターシート プレイヤー:田中
【スタイル】サポーター
【プライマリ】エトランゼ(宇宙人)
【セカンダリ】ストレンジャー(マッドサイエンティスト)
【出自絆】人間の世界(好奇心)
【邂逅絆】若槻由美(友情)
【初期エゴ】侵略せよ
PC③担当PL:田中
初代『魔獣の絆RPG』時代からの古強者。これまでに100本以上のBBTシナリオを作り、遊んできた歴戦のTRPGユーザー。
GM経験豊富という側面からの読みが随所で冴え渡る。
作成したシナリオのプリプレイ情報をTwitterでよく公開されているので、その流れで知っていらっしゃる読者の方もいるかもしれない。
GM:……実相寺哲夫とか、言われてピンと来るプレイヤーがどれだけいるだろうか。そんな感じのハンドアウトですが、そんな案件に乗ったアンジェさん、自己紹介をお願いいたします!
慧鳥アンジェ:レンドリー星人、かなり好きな公式NPCですよw
スグル:でもこういうルルブの隅に書かれてるキャラクター、使いたいという欲はとても分かる
慧鳥アンジェ:ではでは、キャラクター紹介を。
【人の名】は慧鳥アンジェ(えとり・あんじぇ) 【魔の名】は、“超銀河知性体・ハイブレン星人”です。
カヴァーは月影高校に通う女学生ですが、その正体は、超銀河的知性を誇る、悪の侵略宇宙人です。
池袋には週一程度、ひとやまいくらで訪れるこの手の侵略宇宙人ですが、このハイブレン星人、そんじょそこらの侵略宇宙人とはワケが違う。IQ1400無量大数を誇る銀河最高の頭脳をもって、様々な銀河系を支配してきた、宇宙で最も迷惑な頭脳の持ち主なのです!
あまりにもその策謀が巧み過ぎて、支配している当人以外は支配されていることに誰ひとり気付いていません。まさに完全犯罪。
特に理由はない。力あるものが侵略するのは当たり前! というマインドで、“羽根”とかいうイカスおもちゃがあるらしい地球ドミニオンにやってきました。自分が来たからには支配は確実なので、もう地球は自分のものだと思っています。
天才は抜かりないので、現地の情報を周到に得るべく、人間の姿に擬態して潜伏しています。そのさい、天才なのでしっかり精神構造や肉体構造も人間を完全にトレースしました。自分の純粋知性は亜空間に格納しているので、必要になるまで出てきません。
───実は、最初の目当てだった“羽根”以上に、人間をトレースした際に知った「愛」なる理解不能なエネルギーに疑念と興味を持って執着しています。こんなやつなので、【エゴ】は「侵略せよ」。同じクラスで、何かと世話を焼いてくれる若槻由美のことは信頼しています。彼女が初期絆となります。
慧鳥アンジェ:データ上は、ダメージサポート!振り直し! 完! という割り切った構成です。《天よりの砲火》で射程サポートもできたりはしますがw 《超発明》で結構いろんなものを持ってくるので、状況対応力はそこそこあるかもです。
慧鳥アンジェ:今回は、レンドリー星人に話を持ち掛けられ、“私の”地球で適当なことしおって、と怒りを覚えて参戦です。というわけで、こんな感じの胡乱な奴ですが、どうぞよろしくお願いいたします!
GM:はーい。よろしくお願いします!
経験点と調整用の枠
今回のセッションは、初期作成+経験点15点までというレギュレーションでキャラクター作成をお願いした。
ルール上、経験点の消費はGMの許可さえ得られればいつ行っても構わない(『BBT』基本ルールブックp.202)とされているので、何かあった時のために経験点を温存しておく、というのはありえない判断ではないだろう。
とは言え、通常のセッションを行う範囲では、先にGMにそうしていいか許可を取っておく方が無難な気がする。
GM:それでは、続いてPC②の黄檗さん、お願いします。まずはハンドアウトの再確認から。
【絆】桑原大悟(関係:ビジネス、共感など)
※指定カヴァー:機動警察。「機動警察」のルーツを持たない場合、死霊課からの出向組とする。
あなたは“機動警察”の一員かつエキストラとして、上司の桑原大悟とともにある「映画」の撮影に協力した。
よくもまあここまで“夜の世界”に踏み込んだ内容を撮っているなと感心していたところに、桑原は飄々とした態度を崩さずに言い放つ。
「よもや、今関東近辺で頻発する“災害”に、この映画が関わっていないだろうね?」
いざ往かん強行調査。我々をナメた代償を、ふざけた監督には教えてやらねばならない。
“ビー・キーパー” 黄檗克
→ キャラクターシート プレイヤー:拾
【スタイル】アタッカー
【プライマリ】ハーミット(機動警察)
【セカンダリ】ネイバー(魔蜂族)
【大罪エゴ】内なる魔への恐怖(大罪:「内なる真魔」)
【邂逅絆】桑原大悟(師事)
【初期エゴ】市民の日常を守りたい
“ビー・キーパー” 黄檗克
→ キャラクターシート プレイヤー:拾
【スタイル】アタッカー
【プライマリ】ハーミット(機動警察)
【セカンダリ】ネイバー(魔蜂族)
【大罪エゴ】内なる魔への恐怖(大罪:「内なる真魔」)
【邂逅絆】桑原大悟(師事)
【初期エゴ】市民の日常を守りたい
PC②担当PL:拾
PCの“魅せ方”への工夫に熟達したプレイヤー。オンラインセッションならではの立ち絵、テキスト、効果音や音楽といった要素も使いこなし、とにかく印象に残る演出を作るのが巧い方。
今回持ち込んだPCは過去にセッションで使用したキャラクターを、経験点調整して持ち込んでいるもので、GMや田中さんは一度同卓経験があるPCだったりする。
GM:ちなみに協力したシーンの一部はオープニングフェイズでちょっと流れます。それでは、自己紹介をお願いいたします。
スグル:はーい。それでは参ります。
【人の名】は黄檗 克(きわだ すぐる)、【魔の名】は“ビー・キーパー”。
元々は特機二課所属なんですが、魔術師の引き起こした悪魔召喚事件に巻き込まれ、魔蜂族との融合体になってしまいました。
現状で暴走などの危険性は無いと判断されましたが、魔物との混ざり物になった事のショックからか無茶な捜査を繰り返した結果、上司である桑原大悟から「少し頭を柔らかくしてこい」と死霊課への助っ人出向となりました。
これを【大罪:内なる真魔】として、出自絆は【エゴ:内なる魔への恐怖】となっています。
幾つかの魔物事件を得てある程度落ち着いてきたので、今回は様子見も兼ねて桑原さんから同行を要請された……という想定です。
性格としては根が生真面目で頑固な部分もありますが、特機二課と死霊課双方での経験で、ある程度の融通は効くようになってきてます。
スグル:戦闘スタイルとしては蜂型ドローンを操りながら機動スーツで戦います。アタッカーとして一通り動ける他、防御支援も出来ます。また、素で社会が高いので情報収集は安定して行えるかと。
スグル:以上です。改めてよろしくお願いします!
GM:よろしくお願いします!
GM:それでは最後に、PC①の佐々木さんですね。まずはハンドアウトの再確認から。
【絆】甲斐織子(関係:友人、庇護など)
※推奨カヴァー:高校生~大学生
あなたの友人、甲斐織子は困り果てている。彼女の身辺で局所災害じみた事が次々と起き、さらに周囲を何者かに見張られているような気配が続いているというのだ。
「これじゃ普通に暮らすのもままならないし、長年飼ってた愛犬はどっかにいっちゃうし、どうにかしたいんだけどさ……」
どうか、彼女の力になれないだろうか。
佐々木紗枝
→ キャラクターシート プレイヤー:ナガマツ
【スタイル】ディフェンダー
【プライマリ】ストレンジャー(魔女)
【セカンダリ】イレギュラー(魔剣)
【出自】人間社会(愛情)
【邂逅絆】ぶらっくきゃっとP(興味)
【初期エゴ】人助けしたい
佐々木紗枝
→ キャラクターシート プレイヤー:ナガマツ
【スタイル】ディフェンダー
【プライマリ】ストレンジャー(魔女)
【セカンダリ】イレギュラー(魔剣)
【出自】人間社会(愛情)
【邂逅絆】ぶらっくきゃっとP(興味)
【初期エゴ】人助けしたい
PC①担当PL:ナガマツ
当サークルのリプレイで毎回出演しているサポーター職人。ロールプレイ面でも、誰かに“寄り添う”在り方の表現が巧いプレイヤー。
BBTを遊び始めた当初からサポーターメインでのキャラクター作成を得意としており、ディフェンダーへの挑戦は今回が初。
GM:人情的なところからの導入になります。それでは、自己紹介をお願いいたします。
佐々木紗枝:それでは、
佐々木紗枝。地球育ちの魔女ですが、魔法の勉強をしてないため、魔法はこれといって使えません。
精霊?に好かれており、ことあるごとに彼らが力を貸してくれています。
困ってるひとを放っておけないタイプの明るい女の子です。ハイスクールライフを満喫中。好物はタピオカジュース。
「魔法は得意じゃないけど、精霊さんと一緒にがんばるよ!」
慧鳥アンジェ:すごい……輝いてる……これが、PC①……
佐々木紗枝:データ的にはガード値重視です。初DFで構築に悩みましたがガード値を上げてみました。取り回しで苦戦するかも知れませんが、よろしくお願いします
紗枝の反撃コンボ
ダメージの属性を変えてしまう《常識改竄》で攻撃を〈感情〉属性にして、「フォースフィールド」のガード値修正効果をON。その上で武器の性能そのものを高めてガードを行う《精霊盾》を併用して、ガードに使用した武器の性能を参照する《流血の代償》の威力を一気に高めるのが紗枝の有する反撃コンボ。
何が酷いって普通のザコ敵なら反撃だけでオーバーキルになるのが酷いのに、さらに《魔刃解》でガード値を上げてくるので…。
なお、本リプレイでは、ハウスルールにより「タイミング:リアクション」の《精霊盾》を、カバーリングと同時のガード時に使用できるものとして裁定している。リアクションとしてガードを行うアーツは少ないし、そう使えた方がプレイヤーも楽しいしね。
GM:それでは、PC間絆の取得になるんですが……今回はどうします? オープニング一通り見てからにしたほうがよいか、忘れないうちにまず今取って、後で関係変更するか。
スグル:こちらは後でも大丈夫です。あとそれとは別になりますが、今回もHO絆の桑原さんが初期の絆枠とダブってるので、一枠分空けたスタートで構いませんか?
シナリオ絆と初期絆の重複
BBTはキャラクター作成時に「邂逅絆」として、公式パーソナリティへの絆を得ることがよくある。そのため、キャラクターによってはハンドアウトで指定された絆と邂逅絆が重複することがままある。
その時の処理は、プレイ環境によって様々だと思うが、今回も事前に申請があったので重複した絆を省くことをGMは許可している。必ずしも他卓で同じ処理がされるわけではないので、必ずその卓のGMに確認すること。
ちなみに、“今回も”というのは、『若きドラクロワの芸術』でも同じやりとりがあったためである。同人誌をお読みいただいた方は、既視感を覚えたかもしれない。
GM:了解です。
スグル:ありがとうございます!
慧鳥アンジェ:こちら、紗枝さんへの絆のイメージは既にあるのですが、取得自体はいつでもOKです。
GM:差し支えなければ、一旦ここで決めましょう。まず間違いなくGMが忘れますので……w
慧鳥アンジェ:了解!
スグル:はーい
GM:順序としては、いつも通りPC①→PC②→PC③→PC①の順ですね。
佐々木紗枝:了解。……考え中
スグル:アンジェさんかぁ……
慧鳥アンジェ:こっちからは、セッション開始時は紗枝さんのことを魔獣だと知らない状態でスタートしたいです。アンジェは、月影高校には自分以外魔獣がいないと思ってます。天才なので1つの学校に魔獣がいっぱいいるとかありえないことを知っているんだ。おれはくわしいんだ。
佐々木紗枝:了解です>魔獣だと知らない状態
スグル:てんさいアピールに余念がないw 出会ってからの印象、になるけど「監察」かなぁ……。協力的に振る舞ってくれるのは有り難いけど、頭の片隅で刑事の感が目を離すな! と告げている感じで
慧鳥アンジェ:了解です! ありがとうございます!
佐々木紗枝:お巡りさんは正義の味方、つまり→「いい人」
スグル:純粋な眼差しに気後れしそうだけど大丈夫ですー
慧鳥アンジェ:ありがとうございます!
GM:だとすると、アンジェさんから紗枝さんへの関係はどうなるでしょう。
慧鳥アンジェ:「興味」です。「愛」をよく分泌するサンプルだと認識しています。
GM:分泌、という表現にすごく納得した
スグル:ですねー。研究者らしい言葉だ
佐々木紗枝:素敵な表現ありがとうございます。
慧鳥アンジェ:いえいえー、こちらこそ受け入れてくださってありがとうございます!
GM:分かりました。これで全員分ですね。各自、記録をお願いしますね。
シーン1:i.2. (also interpreted as I'll Invade)
マスターシーン/[怪獣シーン]
[怪獣シーン]
「ブラッド:ジャイガント」のルールを導入する際、新たに定義されるシーン。
このシーンでは「怪獣」に焦点が当てられる、ないしシーンが怪獣に寄って展開することを表す。
「ジャイガント」のアーツは、この怪獣シーンでなければ使用できないものが多数存在するため、怪獣シーンにならない戦闘が若干苦しくなることがあるが、その破壊力はどれも絶大。
本シナリオでは、[怪獣シーン]かどうかは、このようにシーン開始時に明示することとした。
轟音。
外を見れば、現実とは思えぬ獅子の異形が咆哮を上げ、高層ビルがひとつ、またひとつと吹き飛ばされてゆく。
遙か遠くにいるはずの獣が、会議室の窓を震わせるこの状況───彼らが平静を失わないのは、ひとえに政治家という「存在」であることへの意地が、未だ恐怖に打ち勝っていた故だ。
「ですから、何度も申し上げたでしょう。アレを止めるには、我々緊急空挺集団にお任せいただければ良いのです」
白髪を刈り上げた男が、恰幅のいい、しかし血の気の失せた顔で座す男に呼びかける。
「我々であれば、あの程度、確実に消し飛ばして見せましょう」
「し、しかしだな、根切くん。君の言う解決法は、本当に最終手段ではないかね? 君の計画を聞く限り、東京どころか関東圏ごと───」
恰幅のいい男は───不幸にも、彼が内閣総理大臣である───震える声で反論する。
白髪の男……緊急空挺集団の長、根切一麻の案は、確かにあのバケモノをどうにかするには期待できるが、投入する火力が甚大だ。
関東ごとあのバケモノを抹殺せんとでも言わんばかりの、圧倒的火力による殲滅戦を、男は受け入れられずにいた。
曽野孝司
公式パーソナリティのひとり。
マスコミ相手の情報操作を得意とする、公安所属のノウンマン。魔物対策の指揮権を公安に一本化するべく暗躍している。
葛藤する男へ注がれた根切の視線を、けたたましい電子音が引き裂く。
「───失礼。緊急連絡ゆえ、この場で聞かせていただきます」
桑原大悟(事実上の本人出演だ)が携帯端末を取り出し、
「───馬鹿な」
一報を聞いて、震えのあまり端末を取り落とした。
「特機二課の機動ユニット部隊が、壊滅? ……出動から、一時間も経たずにか?」
総理大臣の顔が、蒼白を通り越す。
視線は、怯える男を捕らえたままで、根切の凄みを増した笑みが、会議室にいる全員に向けられる。
「───これはこれは。ご決断されるほかありませぬぞ、総理?」
その笑みは、どことなく狂気に満ちあふれていた。
シーンPC:黄檗克/他PC登場不可
GM:それでは、まずはオープニングフェイズのトップバッターはPC②、スグルさんです。撮影に協力した映画について、桑原と話すシーンになりますね。
スグル:はーい
桑原大悟:「いやあ、本人出演ってのも楽じゃないねえ。そうは思わないかい、黄檗クン?」
あなたと
桑原大悟は、特機二課として協力した映画───『i.2.』のワンカットを見て、思い思いにその感想を述べあっている。
パニック映画の巨匠、ミュリザートと呼ばれる男の新作。リアリティを求めて機動警察に、機動ユニットに求めるものがあったといい、人々のために奮闘する姿を描いてもらえるならと承諾した桑原は、描かれた様子が必ずしも実情にそぐわないことに不満げだった。
桑原大悟
公式パーソナリティのひとり。警視庁が有する、“魔物犯罪”に応ずるための機動パワードスーツ部隊「特機二課」の課長。
“部下達の自主性に任せる”として今やほとんど何もしない男だが、魔物について非常に詳しく、魔物組織へのコネクションも充実しているなど、経歴には謎が多い。
「特機二課」、すなわち機動警察は自衛隊の到着前に目標を破壊する攻性の組織だが、出動にあたって発生する被害も甚大であり、今や煙たがられている。『トリニティ』現在では、“羽根”事件への対応のため、警察庁の管轄にある死霊課と連携することも増えているようだ。
桑原大悟:「とは言え、頼まれた役のほとんどが機動ユニットに乗ってやられる端役、ってのも冗談がきつい話だ。『機動警察』がそう大人しくくたばるかっての」
GM:割と数多くの機動警察隊員が協力していますが、スグルさんの役柄がどうだったかは自由に決めちゃってください。
スグル:じゃあ無難にパトカーで避難誘導する係とかで。
スグル:「やられた程度で大人しくなる“行儀の良い”面子ばかり、と思われるのも癪ですね。……あと、こっちに本職を引っ張ってくる度胸あるなら、せめて自衛隊側もマシにして欲しかったですが」
スグル:撮影用の装備のディテールなどにも文句を述べつつ。……パトカーじゃねえな。白バイ。
桑原大悟:「いやあ、キャスティングとしては頑張った方だと思うがね。百鬼のそっくりさんが出てきた時には笑いを噛み殺すので精一杯だった」
桑原大悟:「まあ、おいそれと戦車や戦闘機を出させるわけにも行かなかったんだろうな……思うに、監督はよほど恐れ知らずか筋金入りのバカだね。あいつの───百鬼の目にこの作品がとまったと思うと恐ろしいね?」
スグル:「……というより、この内容で企画が通った事が少し引っかかりますね。誇張した部分があれど、『知っている』側の内容が多すぎやしませんか?」
スグル:「イリジウムやボードゲームの設定ならともかく、人目に付きやすい映画で、というのは……」
桑原大悟:「知らない連中が見たって、『設定が緻密なフィクション』ぐらいにしか受け取られないだろうとタカをくくってるのかもしれないがね。……まあ、その辺はよしとしよう。本題はむしろこの後だ」
GM:GMから、《資産:法則》の適用を宣言します。これは各PCが、「今の池袋の状況」を少なからず知っているという設定を付与するものです。
スグル:ほう!
GM:内容は、【池袋で、規模が拡大していれば“災害”と呼ばれてもおかしくないような現象が、多発している】こと。
咳払いをひとつ挟み、桑原の表情から笑みが完全に消える。
「今、池袋では地震、雷、火事に竜巻と、規模は小さいがまあ“災害”と言っていい案件が、いくらなんでも集中しすぎてる。今はまだ、死霊課や特機二課まで駆り出されるような事態にはなっていないけどね。」
「問題はここからだ。その現場を的確に指定して、しかも撮影中に“災害”に見舞われることだってあった。それも何度も。───おかしいと思わないか?」
スグル:「───もし、これが意図された“事件”だとしたら。狙いがどこにあるにしろ、わざわざウチを招き入れて思惑を通せると思ってるのなら、それこそ黒幕はこちらをナメているか。あるいは、『捜査の手が伸びる』事を期待しているか、ですね。……どちらにしろ、映画での扱いのように“行儀よく”動いてやる義理もありませんがね」
桑原大悟:「あのミュリザートとかいう監督は、僕達をこれほどにナメてかかってきたわけだ。となると、やるべきことは分かるね、黄檗クン。警視庁の破壊神……壊し屋を軽く見たツケを払ってもらう。僕達を侮った彼の作品、あまりにもその正体が目に余るようであれば、ぶち壊してやろうじゃないの」
いつものへらへらとした“軽さ”のない、不敵な笑みを浮かべて桑原は言う。
スグル:「───わざわざ『可能なら実働で使ってる装備も持ってきてくれ』なんて注文もありましたからね。撮影の合間にこっちの忘れ物があったとしても、文句は言わせませんよ」 既に、バイク後部から放たれた蜂型ドローンは撮影現場を監視し始めている!
桑原大悟:「今回は、昔のような無茶無法をとことん許す。この件、『機動警察』らしく落とし前をつけに行け」
スグル:「……了解しました!」 鋭く応えてシーン終了、でしょうか。
GM:OKです。絆・エゴのチェックを行いますが、申請はありますか?
スグル:絆・エゴの申請などは今はナシでー
絆・エゴのチェック
「絆の取得確認」「罪の獲得申請」の両方を呼びかけるためにGMがよく使う言い回し。絆の取得はいつでも行えるのだが、ロールプレイに夢中になった結果、取りたい時に取るのを忘れていた……なんてことがあるので、シーン終了時にまとめて再確認の意を込めてこのような呼びかけを必ず行うようになった。
シーンPC:慧鳥アンジェ/他PC登場不可
GM:では、続きまして。アンジェさんのオープニングシーンと参りましょう。自称・映画監督の実相寺哲夫から、池袋で撮影が進むパニック映画についての相談を受けるシーンになります。
慧鳥アンジェ:了解!
実相寺哲夫
公式パーソナリティのひとり。
映画監督を自称し、日がな一日ぶらぶらとしている謎の男性。その正体は、地球侵略のためにやってきた「レンドリー星人」という宇宙人。
……とは言え、偵察の報告が地球時間で1000年後であり、のんびり過ごしているのだとか。池袋でエトランゼたちの互助会、「SCG」の相談役も務めている。
まあ、話の前に茶でも一杯飲もうよ───
寂れたアパートの一室に招かれたあなたは、日本の文化を満喫する目の前の男との腐れ縁を、改めて実感していた。
自称「映画監督」、実相寺哲夫。その正体は、遙か彼方の宇宙からやってきた異星人。
自ら点てた茶を啜りながら、実相寺はあなたを呼んだ理由を語り始めた。
「いやあ、しかしここまで来るのも苦労したでしょう。何せ今の池袋は、大変だからね」
「地震、雷、火事、騒音、竜巻……どれも小規模だけど、いくらなんでもちょっと、僕が知ってる日本の頻度ではないねえ」
「……そこで、ちょっと君に聞いてほしいことがある」
慧鳥アンジェ:「良い見世物であった。この私を誰と思う、レンドリー星人。銀河一の頭脳を誇るハイブレン星人の前には、災害など無聊を慰めるためのものに過ぎぬのだよ、はっはっは!!」
やっすい雨ガッパを脱ぎつつ。
「だが確かに、気象に有意な変動がみられるのは確かだ。何かネタを掴んだようだな? この私が聞いてやろう。物語を紡ぐのが専門の貴様だ。つまらぬ話ではあるまいな?」
実相寺哲夫:「いやはや、相変わらずだねえ、ハイブレン星人さん。とは言え、今回話すのは僕の『表向きの仕事』にも関わることでね」
実相寺は、嫌悪感をあらわしつつ言う。
「この池袋で、今映画を撮ってる奴がいるみたいなんだけど……その現場を調べて欲しいんだよ。どうも、『災害』の現場を的確に押さえたゲリラ撮影っぽくてさ。パニック映画を撮ってるって噂もあって、怪しいんだよな……できれば、ぶち壊しにして欲しいくらいさ」
「この星に住んでるのは、きみのような才気溢れる異星人ばかりではないからね。地震、雷、火事、竜巻……無辜の人々はずっと戸惑ってるわけでさ。それに便乗して映画を作ろうなんて、ちょっと“自称”映画監督のおじさんでも目に余るんだよ」
慧鳥アンジェ:「“無辜の民”か。貴様の侵略者としての致命的な欠点は、侵略対象への共感能力の高さだな。だが、私の思う貴様の最大の美点もそこだ」
にやりと笑って、アンジェは続ける。
「この星の技術では、未だ災害の正確な予知は不可能だ。となれば可能性は2つに絞られる。
その1:そいつは何らかの“この星の常識を超えた災害予知能力”を持っている。
その2:そいつが、“災害を起こしている”。
どちらにせよ、私の地球を勝手にダシにし、標本を傷つけて悦に入る輩を赦す謂れはない。なるほど、確かに利害は一致しているようだな?」
実相寺哲夫:「そうそう。ついでにSCGに貸しを作るついでだと思ってくれればいいよ。地球はいい惑星だからね。報告が求められている“その時”までは、ゆるりと生きていくのも悪くない……だから、ここはひとつ、きみにお願いしたいね。ハイブレン星人さん?」
慧鳥アンジェ:「ふふ、高くつくぞ、私の頭脳は。だが、私の頭脳に目を止めた貴様の賢明さを評価し、その願いを聞き届けよう。
私の地球が良い星であることは同意であるし……何者か知らんが、少しは楽しませてもらえそうだからな」
GM:では、このあたりでシーンを終了しましょう。実に異星人らしいシーンでした。
慧鳥アンジェ:あ、1つだけロール追加していいですか?
GM:OKです!
慧鳥アンジェ:ありがとうございます! では出動するべくいそいそと雨ガッパを着込んだところで、スマホが鳴ります。取り出して確認。「む? おお、由美か」
「はーい、アンジェですぅ! 由美ちゃん、どうしたんですかぁ? 今、向かってるところですよぉ!
え、なになにぃ? え……今日の、遊ぶ約束、キャンセル……? 天候不順で、親御さんに止められたんですかぁ? あ、そ、そうですかぁ~~……あっ!! うん!! ぜんぜん!! ぜんぜん気にしてませんからぁ~!! うん、うん、また今度、うん!! 連絡ありがとうございますぅ~~!」
「…………一緒に遊ぶ約束が……」
慧鳥アンジェ:「……どうやら、奴を赦せない理由が1つ増えた……レンドリー星人、前言撤回だ。この依頼、無料でやらせてもらうぞ……!!」 ギラついた顔で出ていきます。
GM:あっけにとられるてつをさんを後に、シーンを改めて閉じましょう。絆・エゴのチェックをお願いします。
慧鳥アンジェ:【エゴ:侵略せよ!】のロールプレイをしたと思います。どうでしょうか?
GM:OKです。罪を1点どうぞ。
慧鳥アンジェ:ありがとうございます。絆はまだいいです。
シーンPC:佐々木紗枝/他PC登場不可
GM:はーい。それではお待たせしました、紗枝さんの出番です。豪雨の中、友人の甲斐織子から相談を持ちかけられるシーンですね。
佐々木紗枝:JKロール続きます。
今日も、風が強く吹いている。それに加えて、雨脚も強い。
雨の中で唐突に火が閃き、雨で掻き消されるよりも早く、人がうずくまるほど強い上空からの風ですぐさま吹き消された。
吹き飛ばされそうになる看板を尻目に、あなたと甲斐織子は教室に入った。
どうも、彼女には相談したいことがあるらしい。
甲斐織子:「……今日も天気がおかしいね、紗枝ちゃん。数日前から、ずっとそう」
甲斐織子:「ちょっと、相談があってさ……。気にしすぎなのかもしれないけど、笑わないでね?」
甲斐織子:「この天気の悪さだったり、火事だったり。……実は、他の子たちの比じゃないくらい、私の目の前で起こることが多いんだ」
佐々木紗枝:「言われてみれば、私も織子ちゃんといるときよく何か起きてる気がするなぁ…」
甲斐織子:「それに、そんな時に限って、すごく周囲から見られてるような、誰かにずっと付きまとわれてる気がして、さ」
甲斐織子:「レオが……私の飼い犬が、ちょうどその頃からいなくなっちゃって。しばらく前までは、私に近づく変なもの全部に吠え立ててたあの子がいなくなってから、誰かにずっと見られているような感覚が、全く消えなくて……そのことで、お願いしたいことがあるの」
佐々木紗枝:「…うん、わたしでよければ言ってみて」
織子は、ためらいながら話す。
「……私が使う通学路に、市の防犯カメラとは思えない、小さなカメラが増えたの。気のせいだったらそれでいいんだけど……そのことで、警察に相談に行こうと思って」
「雨の中申し訳ないんだけど、付き添ってもらえないかしら……?」
佐々木紗枝:(こんな状況でそんなことがあったら確かに心細いよね……) 「うん。私は大丈夫よ。こんな状況だもの、些細なことでも不安を取り除かなきゃ!」
甲斐織子:「ありがとう! 紗枝ちゃんに話してみてよかった……! 何か、周りで良くないことが起こっているような、嫌な予感がするの。当たらなければ、よいのだけど……」/
佐々木紗枝:「おなしなことが立て続けに起きてるもんね 。 私で良かったらいつでも相談に乗るよ。あ、もし迷惑じゃなかったら、レオ君探すのも手伝わせて」
甲斐織子:「……ありがと。でも、雨も強いし、レオを探すのはまた今度かな? ……これ以上雨が強くなる前に、行こっか」
佐々木紗枝:「うん。」 以上です。シーン締めて大丈夫です。
GM:では、絆・エゴのチェックを。
佐々木紗枝:絆の申請は無しです。【エゴ:人助けしたい】で罪申請通りますか?
GM:OKです。罪を1点どうぞ!
佐々木紗枝:ありがとうございます。
GM:では、オープニングフェイズの最後に。改めて(卓立ち上げ時に配布したハンドアウトには書いてましたが)【SA】を再掲します。
紗枝 【SA:織子の助けになる】
スグル 【SA:映画撮影をぶち壊せ】
アンジェ 【SA:パニック映画の正体を明らかにする】
GM:以上です。皆さん、頑張ってください!
スグル:はーい!
慧鳥アンジェ:了解!
佐々木紗枝:頑張ります!
GM:続いて、オープニングフェイズ分の舞台裏の処理を1回ずつ行います。何かありましたらお願いします。
舞台裏の処理
シーンに登場しなかったPCは、「舞台裏の処理」として、【FP】の回復か、アイテムの購入判定を行うことができる。
本セッションでは、ハウスルールとしてオープニングフェイズ中の舞台裏の処理はすべて省略する代わりに、オープニング終了後に全員まとめて1回だけ舞台裏の処理を行うようにしている。
スグル:「治癒薬」の購入判定をします。目標値12、【社会】9でスタート。実質ファンブルしなければ成功するが……
佐々木紗枝:つよい
GM:どうぞー。
スグル:(ダイスを振る)達成値18、無事成功。
GM:駒か共有メモのところに記載しておいてください。次はどなたが?
佐々木紗枝:「再生薬」に挑戦したいです。(ダイスを振る)達成値11……。
GM:財産点を1点払うかどうか、ですが……。どうします?
佐々木紗枝:諦めます。
GM:了解です。アンジェさんはどうされますか?
慧鳥アンジェ:ではこちらで再生薬を購入します! 難易度12!
GM:判定をどうぞー。
慧鳥アンジェ:(ダイスを振る)達成値14。天才なので購入成功
スグル:これは天才。
佐々木紗枝:さすが天才。
スグル:マッサイだし自分で調合してそうだな……
慧鳥アンジェ:自家栽培の宇宙アロエとかで作りました(?)
GM:それでは、入手物はどこかに記録しておいてください。では最後に、《資産:隠匿》の使用を宣言。今のシーンで使用されたアーツひとつの内容を隠蔽します。以上で、オープニングフェイズを終了します。